生体医工学
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StrucchangeによるAT(Anaerobic Threshold)の探索
相田 武則西村 裕介田口 洋介野中 尋史早見 浩史内山 尚志永森 正仁小林 麻衣高山 亜美木村 慎二塩野谷 明
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 167_2

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抄録

近年,心疾患や腎疾患等の患者を対象とした運動療法分野において,最適な運動負荷強度の指標としてAnaerobic Threshold(AT:無酸素性作業閾値)が用いられている.ATの決定については,血液分析など侵襲的検査が必要であり,高度かつ高価な計測が必要になることに加え,医師等の経験則に頼らざるを得ないなど,その値を定量的に同定できる方法が存在していない.こうした背景から本研究は非侵襲データである呼吸パラメータを対象とし,strucchangeによるATの客観的同定を試みることを目的とする.実験方法としては,自転車エルゴメータ(COMBIWELLNESS社,EZ101)を用いた負荷漸増運動を実施する.喫煙歴のない被験者10名を対象とした.被検者は呼気ガス分析用マスクを装着後, 約20分間の漸増負荷運動を実施した.採取したVE(換気量:L/min),VCO2(二酸化炭素排出量:ml/kg/min)を以下3つの解析手法,代謝解析装置(Vmax29s),Strucchangeによる解析, V-slope法を用いて解析し,AT結果について検討比較した.その結果, VO2,VCO2については,代謝解析装置およびStrucchangeによる解析は10名中8~9名ATがほぼ一致する結果となった.一方,検者2名で実施したV-slope法は前記2手法と比較した結果,10名中4名でAT一致を確認した.この要因としては,V-slope法での検者による解析過程で個人誤差が生じ,主観的要素が排除できない結果であると考えられた.今後の課題として,被検者の運動歴などを考慮した他の呼吸パラメータの設定など,被検者の個人差を考慮した適切な解析手法を検討していくことが必要であると考えらえる.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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