生体医工学
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細胞集合体灌流による脱細胞化腎臓の再細胞化
溝口 真司木村 剛橋本 良秀中村 奈緒子岸田 晶夫
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 178_1

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抄録

 慢性腎不全に対する再生医療として、生体組織から細胞を除去した脱細胞化腎臓を再細胞化させた腎臓の再構築や、細胞を三次元培養した細胞集合体の移植などの研究が行われている。脱細胞化腎臓の再細胞化では、脈管・血管網を利用して腎臓内に細胞を送達する方法が提案されており、用いる細胞種、送達順、流速などに関する研究が多い。本研究では、新たな取り組みとして、分散細胞および細胞集合体の灌流による脱細胞化腎臓の再細胞化について検討した。 ラット腎臓を用い、腎動脈から脱血用洗浄液、界面活性剤を含む脱細胞化液、洗浄液を灌流し、これらの脱血処理,脱細胞化処理の条件探索を行った。脱細胞化腎臓の外観が透明になっており、残存DNA定量、HE染色より細胞除去と組織構造維持が示され、また、染色溶液を灌流にて血管網の維持が示された。 次に、脱細胞化腎臓の再細胞化について、アフリカミドリザル腎臓由来細胞(COS-7)を用い、Calcein-AM/PI染色により細胞接着および細胞生存を検討した。脱細胞化腎臓への細胞の初期接着について、細胞分散液および細胞集合体の播種にて検討した結果、いずれも細胞接着が示された。また、腎動脈から細胞を灌流した結果、細胞分散液では抹消血管の腎皮質部位での細胞接着が示され、細胞集合体液では腎臓中心部での細胞接着が示された。以上より、分散細胞、細胞集合体を組み合わせた灌流により脱細胞化腎臓の全体の再構築の可能性が示唆された。

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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