生体医工学
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新たな心房細動治療法の開発を目的とした心房モデルの構築
稲田 慎岸田 優作高山 健志井尻 敬芦原 貴司大星 直樹柴田 仁太郎中沢 一雄
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2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 181_2

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抄録

[背景]心疾患の一つである心房細動は,高齢になるに従い罹患率が増加する.心房細動の治療方法の一つはアブレーションで,発作性心房細動の段階では,肺静脈を電気的に隔離することで高い治療効果が得られる.しかし,慢性期になると細動を維持する機構が増幅され,焼灼による治療は困難となる.そのため,慢性心房細動に対する新たなアブレーション手法の開発が必要である.[目的]アブレーションによる心房細動の治療法開発のために,心房内の電気的興奮伝播をシミュレーションにより再現することが可能な心房モデルの開発を目的とした.[方法]まず,MR画像を基に心房形状モデル(サーフェスモデル)を構築した.次に,心臓モデルに心筋線維走向を手書きで導入するアプリケーション(Takayama et al, J Physiol Sci, 2008)を用いて心房形状モデルに心筋線維走向を設定した.さらに,心房形状モデルをボクセルモデルに変換し,各ボクセルを心筋細胞の集合であるユニットとした.各ユニットにヒト心房筋細胞の活動電位モデル(Courtemanche et al, Am J Physiol, 1998)を組み込み,心房内の電気的興奮伝播のシミュレーションを可能とした.[結果・考察]構築した心房モデルを用いることにより,心房内の電気的興奮伝播を再現できた.洞調律よりも速い頻度で心房を興奮させた場合,興奮伝播は複雑に変化し,不整脈が誘発される可能性が考えられた.今後は,心房細動をモデルで再現し,アブレーション手法の検討を進める予定である.

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© 2022 社団法人日本生体医工学会
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