2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 216_1
皮膚表面に装着した電極から対象筋に電気刺激を加えることで収縮を誘発する筋電気刺激は、随意運動が困難な状態の筋への筋萎縮の予防やリハビリテーション,血行改善等を目的として利用が進んでいる。しかし、筋電気刺激が局所筋の循環機能に及ぼす影響の検証や随意運動との比較は十分に行われていない。本研究では生体深部の血流動態を非侵襲的に計測可能な拡散相関分光法(DCS)を用いて電気刺激による筋運動が骨格筋血流動態に及ぼす影響を検討した。健常者19名を対象として、最大随意筋力の20%強度での2分間の動的足関節背屈運動(2秒収縮・2秒弛緩)を随意的あるいは前脛骨筋への電気刺激により行い、前脛骨筋の血流動態をDCSにより測定した。運動を開始すると両条件で血流量が増加したが、運動後半では筋電気刺激の血流増加量が大きかった。運動終了後、随意運動では血流は速やかに安静水準に低下したが、筋電気刺激では低下が緩慢であり、6分間の回復期を通して安静水準よりも高かった。筋電気刺激では随意運動と比較して足関節背屈運動に関与する協同筋の活動割合が低い、あるいは協同筋の活動位相が揃わないために前脛骨筋の活動量が高まることで血流量がより大きく増加したと考えられる。筋電気刺激は対象筋において随意運動を上回る血流増加を引き起こすことが可能であり、随意運動の代替として骨格筋の循環機能の維持・向上に寄与することが期待できる。