2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 220_1
従来,メンタルヘルスの評価には主に質問紙が用いられているが,客観的な評価法として自律神経指標の利用が期待されている.近年,制御呼吸における呼吸の吸気と呼気の時間に着目した吸気呼気時間比率 (inhalation-exhalation ratio :IE 比)を用いた研究が行われており,先行研究では,制御呼吸において,IE比が高いほど副交感神経が優位になり,IE比が低いほど交感神経が優位になることが示されている.本研究では,特に自発呼吸におけるIE比の個人差に着目し,安静時における IE 比と心理指標および自律神経指標の関係を検討した.心理指標の評価にはリラックス感尺度,STAI(不安尺度),ピッツバーグ睡眠質問票を用いた.また,自律神経指標として,バンド型呼吸センサ,光学式脈波センサ,電極式脳波センサを用いて安静時の計測を5分間行い,呼吸数,IE比,HF,LF/HF,α波のパラメータを取得した.健常成人30名において相関解析を行った結果,IE 比が高いほど,リラックス感尺度やHFが高まる傾向が示されたが,いずれのパラメータもIE比と相関は有意ではなかった.これらの結果から,IE比単独ではメンタルヘルス指標として不十分であることが示唆された.今後,IE比算出法の改善とともに,呼吸速度やIE比の時間変動などにも着目し,より詳細な検討を実施する予定である.