2022 年 Annual60 巻 Abstract 号 p. 233_2
喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸機能が低下する疾患では,全身的な疲労,活力低下,筋力低下をもたらす.呼吸機能の回復,維持,向上のために有酸素運動などの運動療法が提案されている.しかし,四肢の運動機能が低下している高齢者に対して,負荷が大きな運動療法は困難である.手軽に呼吸機能訓練が実施可能なものとして種々の呼吸訓練機器が開発されているが,単純な動作の繰り返しのため,モチベーションの維持が難しい.そこで,呼気による楽器演奏を行うことで,楽しみながら継続的な呼吸機能の訓練が実施可能となると考えた.この様な観点から,本研究では呼吸筋トレーニング,リハビリテーションを目指した呼気による電子楽器演奏デバイスの試作を目的とする.本研究では筆者らが開発してきた電子福祉楽器サイミスにおいて用いる演奏デバイスの試作した.演奏デバイスはペットボトルと風船, ピアニカの唄口を取り付けた構造である.唄口には直径4[mm]および2.5[mm]の開口部を設けることで,既存の呼吸機能訓練機器とほぼ同じ負荷(呼気流量-呼気圧)を実現できることを示した.試作した演奏デバイスを用いた楽曲演奏実験を行った.その結果,既存訓練機器において実施されるトレーニングの呼吸強度,回数を楽曲演奏にて実施可能であることを示した.このことから,本演奏デバイスによる呼吸訓練の可能性が示唆された.