2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 172_2
本研究では手を対象とし,昇降によって変化する脈波伝播速度を利用して拡張期血圧を推定する方法を提案した.さらに,映像脈波を利用した非接触推定も試みた.
動脈の脈波伝播速度の2乗は血管の固さと血圧に比例し,血液の比重に反比例することが知られている.一方,心臓と末梢との拡張期血圧の差ΔPdは,拡張期の血流が十分少ない場合,基本的に心臓との高低差hと相関する.すなわち,ΔPdとhとの関係が既知であれば,末梢の異なる高さの脈波伝播速度vpとhから,心臓の拡張期血圧を推定できる可能性がある.
容積脈波センサを指の基部と指先に装着し,手の高さを変えて脈波を計測した. ΔPdがhの一次関数f(h)であるとし,拡張期血圧の実測値とvpをからf(h)を算出したところ,比較的個人差が少なく再現性が高いことが示された.また,この結果を用いて拡張期血圧を推定したところ,推定値の二乗平均平方根誤差は5mmHg以下であった.次に,手の映像脈波から得た脈波伝播速度と手の高さとの関係を調査したところ,接触式センサと同様な関係が得られた.以上から,姿勢変化を利用することでカフレス血圧推定が可能であること,さらにこの方法を非接触化できる可能性が示唆された.