生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
分岐血管モデルを用いた複合力学刺激に対する血管内皮細胞のタンパク質発現分布解析
村松 淳平清水 あずさ橋本 道尚三浦 重徳尾上 弘晃
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 176_1

詳細
抄録

血管内皮細胞は、力学刺激に応答してその機能や形態を変化させることが知られている。この細胞応答機構を解明することは、薬効試験や病態解明のための成熟した人工血管モデルの実現につながるが、その詳細は未解明である。先行研究では、力学刺激を内皮細胞に印加可能な血管モデルがいくつか報告されており、そのうちの一つは直線流路内で培養した内皮細胞にせん断応力や伸展刺激を与え、遺伝子発現の変化を解析している。しかし、生体内の血管は複雑に湾曲・分岐しており、不均質で乱れた力学刺激が生じている。特に、動脈硬化などの炎症が、流れが乱れる分岐部に頻発することから、不均質な力学刺激に対する細胞応答が大きな鍵を握ると考えられるが、乱れた力学刺激に対する局所的な細胞応答に着目した研究はこれまでなかった。そこで本研究では、複数の分岐を有するin vitro血管モデルを用いた、不均質な力学刺激に対する内皮細胞の遺伝子応答のマイクロスケールマッピング解析を提案する。本研究では、ECMとPDMSからなる分岐血管モデルを作製し、内皮細胞の伸展・灌流培養を行った。また、培養した内皮細胞を免疫染色することにより、乱れた力学刺激に対する局所的な細胞応答の可視化を行った。本研究は、生体内の内皮細胞応答を完全に再現したモデル構築への大きな一歩となり、力学刺激に対する細胞応答観察システムとしてのプラットフォームとなることが期待される。

著者関連情報
© 2023 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top