2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 199_1
我々は生体内反応活性化を引き起こすフォトバイオモジュレーション (PBM) を利用することで低侵襲なパーキンソン病 (PD) 治療の実現を目指す。病理学的観点で見たPDは、リン酸化したαシヌクレインを含むレビー小体が特徴であり、ドパミンの分泌低下で運動機能障害を引き起こす。PBMは低出力レーザーを生体に照射することで、細胞破壊を伴わない生体刺激反応から様々な効果を得る方法である。我々は、生体へのPBMで有効とされる波長664-1064 nmのレーザーを用い、ミトコンドリアの活性化による細胞内でのATP産生増加を期待し、それに伴うPDの正常細胞増加が可能であると考えた。
本研究では、パーキンソン病モデル細胞としてαシヌクレインを過剰発現させたSHSY-5Yヒト神経芽細胞腫に対するPBMの効果および有効条件を明らかにすることを目的とした。マイクロプレートに培養した神経芽細胞腫に対して、波長664, 808, 1064 nm, 放射照度100 mW/cm2のレーザーを450, 900 sの条件で照射をした。レーザーによる影響を評価するために、光照射48時間後にPD関連物質であるリン酸化αシヌクレイン、αシヌクレイン、チロシンヒドロキラーゼをウエスタンブロッティングにより定量した。波長1064 nmの照射によりリン酸化αシヌクレインが約40%の減少、チロシンヒドロキラーゼは約30%の増加が見られた。以上より、波長1064 nmのレーザー照射をすることで、αシヌクレイン凝集体の凝集力低下とドパミン産生促進の可能性が示唆された。