生体医工学
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外円法Clock Drawing Testの描画特徴定量化による認知症疾患の鑑別
増尾 明久保田 純平伊藤 有生佐久間 拓人加藤 昇平
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 210_2

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抄録

認知症治療に携わる老年医学分野では,認知症の鑑別のみならず機能障害の把握や治療計画の立案などの臨床推論を目的に様々な神経心理検査を実施している.本稿では,時計描画テスト(CDT)に機械学習を適用し,描画異常から認知症疾患を鑑別する手法を提案する.共同研究機関である認知症外来に通院する高齢者129名を対象とした.診療録から認知症の診断情報および外円法によるCDT描画データを取得した.Freedman採点基準によって描画異常を定量化し,1サンプルの描画データから12種類の描画特徴量を抽出した.認知症診断情報に基づき,対象者を認知症群58名と健常群71名の2群に割り当て,Borutaによる特徴選択後にSupport Vector Machineを用いた鑑別性能評価および鑑別に寄与する描画特徴解析を実施した.5分割交差検証の結果,感度は0.74±0.16,特異度は0.74±0.18であった.また,判別に寄与する特徴として「時計の数字の位置」「分針の配置」「時針と分針の長さ」に関する3種の描画特徴が選択された.神経心理検査の解釈は個々人の技量や経験に影響されるため,臨床推論過程を自動化した点において本研究は独創性が高い.また,認知症鑑別に寄与する描画異常を特定した点は,臨床上有効性が高い.今後は描画データ数および描画特徴の拡張によって鑑別性能の向上を図り,認知症の簡便な一次検診応用を目指す.

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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