生体医工学
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新規3層光学皮膚ファントムを用いた非侵襲光血糖モニタ開発のための計測部位と光学系の最適化
菊地 陽太神 隆野村 保友
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 224_2

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抄録

 近年、近赤外光を利用した非侵襲血糖モニタの研究が盛んに行われているが、組織の吸収スペクトルからグルコースの濃度変化を正確に検出することは極めて難しく、実用化には至っていない。そこで本研究では、光血糖モニタ開発のための最適な計測部位と光学系を提案する。初めに、表皮・真皮・皮下脂肪で構成される3層光学皮膚ファントムを開発した。従来ファントムの問題点を全て解決する画期的な手法であり、各層の厚みを目的部位と同等にするのみで近赤外波長域の光学特性を再現可能である。本研究では手背と上腕外側に相当するファントムを作製し、真皮・皮下脂肪層にグルコース(100-500 mg/dL)を含有させた。次に、(i)入射角度と光源-検出器間間隔を厳密に設定して拡散反射光の一部を検出する光学系と(ii)積分球によって全ての拡散反射光を検出する光学系を構築した。2種のファントムに対して各光学系で拡散反射光強度測定(900-1600 nm)を実施し、得られた吸収スペクトルの信号対雑音比(SNR)を比較した。結果として、グルコース添加による水置換の影響によって1450 nm付近での濃度増加に伴う吸光度低下が観察された(R=-0.99)。また、(i)は(ii)の2倍、手背は上腕外側の1.5倍高いSNRを示した。従って、手背を計測部位とした(i)の光学系によってより高精度にグルコースの濃度変化を検出できる可能性がある。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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