生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
補助人工心臓運用時におけるカルマンフィルタを用いた循環状態の推定
下川 柚依田中 明吉澤 誠白石 泰之山家 智之
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 248_1

詳細
抄録

補助人工心臓は循環状態に合わせて出力を変えることが望ましい.特に,弁の開閉の有無や末梢血管抵抗などをリアルタイムに把握することは,適切なポンプ出力を決定する上で重要である.しかし,循環状態を監視するために,生体に多数のセンサをつけることは望ましくなく,できだけ少なくかつ循環に影響を与えないセンサ情報のみで循環状態を表す多くのパラメータを把握することが理想的である.そこで、本研究では,ポンプ周辺の計測量であるポンプの前後負荷とポンプの流量を用い,循環の近似モデルから循環状態を推定することを目的とした.本研究では体循環系を,2要素のWindkesselモデルを基に構成した.また,これら循環系モデルをポンプ流量とポンプ前負荷を入力,ポンプ後負荷を出力とし,左心室圧,大動脈圧,大動脈流量,血管抵抗および血管のコンプライアンス等のモデルパラメータを状態変数とする状態空間モデルで表現した.また,弁抵抗は非線形関数によって表現し弁の差圧で値が変化するようにした.状態推定には,非線形システムにおいても計算可能なアンセンティッドカルマンフィルタ(UKF)を用いた.検証は,生体循環系シミュレータを内包しつつ実際のポンプを装着可能なハイブリッド模擬循環システムを用いて行った.その結果,モデルの入出力関係の推定精度が高い場合には,弁の開閉など各状態量の変化を推定できる可能性が示された.

著者関連情報
© 2023 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top