2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 254_2
排尿障害の患者数は,高齢化に伴い増加傾向にある.排尿障害の治療には排尿情報の記録が必要である.一般的には計量カップや医療用尿流計を用いた測定が主流である.しかし,これらは尿に直接接触する用具であるため,適切な清掃・消毒や廃棄が必須である.また,医療用尿流計を用いた測定では,慣れない用具・環境による緊張から,排尿状態が普段と異なる可能性がある.我々は立位排尿時の体重減少を利用し,排尿量および尿流量を自動計測するシステムを提案している.PCを用いた既報告のシステムでは,可搬性と設置性に問題があった.本研究ではPCの替わりに小型のマイコンを用いて体重計と無線接続し,排尿による体重減少を自動記録するシステムを開発した.これまでに容器からの自由落水による疑似排尿で,排尿量,尿流量の計測が可能であることを確認した.特に排尿量は測定の90%で誤差が±10 mL以内となった.富山大学倫理審査員会からの許可を得,若年健常男性5名から合計45回の排尿を,本システムと医療用尿流計(P-Flowdiary, 村中医療機器)で同時計測した.その結果,排尿量と最大尿流量の誤差は-1.50±18.10 mLと-1.04±3.61 mL/sであった.Bland-Altman分析により,系統誤差が小さいことが確認された.排尿量の比較では,直線近似でy = 0.96x + 9.71,R2 = 0.98と良好な結果を得た.排尿による微少な体重減少と重心同様によるアーチファクトとの判別が困難なため,尿流時間は-4.21±3.33 sと過小評価された.