2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 273_2
【背景】超音波診断装置では血流イメージングにドプラ効果が利用されている.特にカラードプラ法は動脈硬化の狭窄を見分ける診断に用いられている.しかし,この方法では軸方向速度しか推定できないため,超音波ビームの角度に依存しない速度推定法が検討されている.
【目的】本研究では超音波ビームの角度に依存しない方法であるベクトルドプラ法とスペックルトラッキング法を取り上げ,血流速度分布計測における推定法依存性を評価する.2つの方法の超音波シミュレーションによって狭窄部の血流速度推定精度の比較を行う.
【方法】有限要素解析ソフトにCOMSOLMultiphysics®を使用し,血管モデルシミュレーションを行った.プラークを模擬し,狭窄を作成した.超音波プローブで送受信される信号のシミュレーションにはField II(J. A. Jensen, Med. Biol. Comput. 34, 351 1996)を用いた.得られたRF信号を解析し,推定速度と真の速度を比較することで精度評価を行う.本研究ではプラークなし,プラークの大きさ1-4 mmの頸動脈シミュレーションファントムを用いて評価を行う.また,ベクトルドプラ法の自己相関窓,スペックルトラッキング法の2次元相関窓の幅を変更して評価を行う.
【結果】プラークなしの場合はベクトルドプラ法,プラークありの場合はスペックルトラッキング法の精度が良い結果が得られた.真値との相関を取ると窓幅によってはベクトルドプラ法の方が良い結果を得られた為,狭窄部の速度推定に適切な条件を検討する必要がある.