2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 283_1
近年の研究から、ガムチューイングなどの咀嚼活動が一時的に認知機能を向上させることは知られているが、咀嚼習慣の変化がガムチューイング中の脳活動にどのように影響するかについての研究はなされていない。本研究はウェアラブルデバイスの使用により咀嚼行動の変容を促した場合の摂食行動およびガム咀嚼課題実行中の脳活動の変化について検討した。若年健常成人41名(男性19名、平均年齢24.0歳)と高齢者50名(男性25名、平均年齢71.9歳)に対し、bitescan(SHARP社製)を1か月間使用してよく噛むことを習慣化する介入群と、通常の食生活を送る対照群にランダムに分割した。介入期間の前後において、咀嚼行動の変容を調べるためにおにぎり(100g)摂取時の咀嚼回数を計測した。またガム咀嚼課題実行中の脳活動の変化を調べるため、機能的近赤外分光法により課題実行時の脳活動計測を行った。若年者では、介入群のみおにぎり咀嚼回数が有意に増加し、ガム咀嚼時の前頭前野背外側部と運動前野の活動が対照群よりも有意に高かった。前頭葉の活動量増加は、bitescanを用いた介入により咀嚼中の口腔運動や咀嚼感覚への注意が増加したことを示唆している。発表では高齢者の解析結果についても合わせて報告する。