2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 303_2
大動脈解離は血管内膜及び中膜に亀裂が生じる死亡率が高い疾患である。現在、ステントグラフトを使用した治療が行われているが、再発リスクが高く再発リスクの推定精度向上が重要になっている。リスク評価としては、ADD-RSスコアなどがあるが、精度が高いとはいえず、形状に基づいた新たな因子等の探索が重要である。本研究では、大動脈解離に物理的に影響する要因として、血管の壁張力と歪み量を検討することとし、これらの推定を行う方法を提案する。胸部CT 画像より大動脈形状をモデル化し、血流シミュレーションを行うソフトウェアとしてSimVascularが開発されており、血管の壁張力は、血管形状から得られる局所曲率と流体シミュレーション結果から得られる静水圧を用いて計算することができる。しかしながら、形状情報からは歪み量を求めることは難しいため、本研究では、血管の弾性率決定因子である血管拡張因子NOの分布を推定することとした。血管壁にかかるせん断応力からNOが生成される細胞内シグナル伝達モデルがSriramらによって提案されており、本研究では、血管壁についてこのモデルを適用することでNOの分布を求め、NOの濃度と壁張力から、大動脈壁の局所歪みを求めた。今後、血流シミュレーションにより血管内のNO量や歪み量を推定することで、大動脈解離再発リスクの推定精度向上を行うことが出来るのかの検討を行う。