生体医工学
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閉鎖式高頻度人工呼吸器を用いた非侵襲肺コンプライアンス計測法の提案
北岡 裕子間瀬 教史木島 貴志
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2023 年 Annual61 巻 Proc 号 p. 345-347

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抄録

肺コンプライアンスは肺の拡張のしやすさの指標で、換気量と胸腔内圧の変化量の比(L/cmH2O)で表わされる。新型コロナウイルス感染などによる間質性肺炎や肺線維症では、肺の拡張が障害されて肺コンプライアンスが低下するとされている。しかし、その算出には胸腔内圧を計測する必要があり、食道にバルーンカテーテルを挿入して計測された食道内圧をもって胸腔内圧とする方法がとられている。食道カテーテルは被験者の肉体的負担が大きく、挿入部位によって測定値が異なるなど、再現性に問題があるため、肺コンプライアンスの計測は臨床では実施されていない。今回我々が提案する方法は、閉鎖式高頻度人工呼吸器(一般名Intrapulmonary Percussive Ventilator、以下IPV)を用いて、気流量と口腔内圧のデータから胸腔内圧を推定して肺コンプライアンスを算出する方法である。いわゆる高頻度換気療法に使用される装置は開放型が一般的であるが、IPVは高頻度(1-5Hz)でジェットを送気する際に排気弁が閉鎖するしくみになっており、肺末梢の排痰補助に有用である。我々は、IPV施行中の気流量と口腔内圧、食道内圧を同時計測し、口腔内圧の変化から胸腔内圧を推定できることを見出した。 さらに、口腔内圧から推定された胸腔内圧を用いて算出した肺コンプライアンスと気道抵抗の値は妥当な値であることを確かめた。IPVも圧流量計もすでに臨床で使用されている装置であるので、新たな呼吸機能検査法として期待できる。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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