2023 年 Annual61 巻 Proc 号 p. 358-360
我々は、血管カテーテルインターベンション後のシース抜去孔止血において、簡便かつ即時的に高い機械的強度を実現可能なレーザー溶着の開発を目的としている。血管カテーテルインターベンションではシースが血管に長時間穿刺留置されるため、シース抜去後にできるシース抜去孔は自然に閉塞しない。用手的圧迫止血法や閉鎖用デバイスが用いられるが、止血部の機械的強度の低さや手技の複雑さなどの問題点があり、未だに最適な止血方法が確立されていない。我々は、レーザー照射により組織内のコラーゲンを60°C付近まで加熱し、可逆的な変性によるコラーゲン溶着を用いたシース抜去孔閉鎖を提案している。
本研究では、摘出ブタ頸動脈に対するレーザー溶着において血液が与える影響および最大の溶着効果が得られる照射条件の検討を目的とした。血液で浸した摘出ブタ頸動脈に対して波長1064 nmのレーザーを照射しサーモグラフィにて血管表面温度の経時変化を測定した。血液に浸した血管では生理食塩水に比べ温度の上昇量が43°C大きかった。また、張り合わせた摘出ブタ頸動脈に血液中でレーザー照射を行い、溶着強度試験系にて引張せん断応力を測定した。放射照度0.2, 0.4 W/mm2において蓄積エネルギー密度がそれぞれ25, 10 J/mm3で最大の溶着強度を得た。レーザーによるコラーゲン溶着を利用することでシース抜去孔に簡便かつ即時的に高い機械的強度を与えることができる可能性が示唆された。