生体医工学
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筋を意識した運動が脳活動と筋活動に与える影響の検討
宇賀田 麗衣中林 実輝絵一之瀬 真志小野 弓絵
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2023 年 Annual61 巻 Proc 号 p. 379-381

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抄録

筋収縮のために脳から発出する運動指令(セントラルコマンド)は、全身の循環系を制御して目的筋に血流を再配分する自律神経系の応答を引き起こし、強い張力の発揮や運動の円滑性に貢献する。 セントラルコマンドの大きさは、負荷や発揮する張力とは無関係に個人の努力感や疲労感によっても変化し、対象筋へ意識を向けることで増大すると考えられている。本研究では生体深部の血流動態を非侵襲的に計測可能な拡散相関分光法と脳波・心電図・筋電図 を用いて、運動させる筋への意識の差が対象筋の血流動態や電気生理学的応答に与える影響を評価することを目的とした。健常者10名を対象として、対象筋(利き手の橈側手根屈筋)を見ながら運動感覚想起を行う高意識条件と、対象筋から視線を外して運動感覚想起を抑制する低意識条件 で一定強度の手首の屈曲運動(2秒収縮・2秒弛緩)を2分間行った。運動による心拍数の変化率は高意識条件において、低意識条件よりも有意に増大したが、 運動関連脳活動に有意な差は見られなかった。また心拍数の変化率と筋電位・筋血流の増加量 にはそれぞれ正の相関があった。 運動意識はセントラルコマンドを増大させ、自律神経活動に影響を及ぼすとともに、より強い筋収縮が促された結果、筋血流量が増大したと考えられる。これらの結果は筋力向上や末梢循環の促進を目的としたリハビリテーションにおける、対象筋を意識しながら行う随意運動の有用性を示唆する。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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