生体医工学
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PET樹脂製極細中空管を用いた低侵襲性マイクロニードルの作製と評価
稲葉 光紀鈴木 昌人高橋 智一福永 健治青柳 誠司高澤 知規須戸 文夫松本 一
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2024 年 Annual62 巻 Proc 号 p. 460-462

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抄録

 近年,世界の糖尿病患者数は急速に増加しており,世界の人口における10人に1人が糖尿病を患っているという現状である.糖尿病患者は1日に数回,中実の金属針(ランセット針)を用いて皮膚を穿孔し,滲み出た少量の血液から血糖値を測定する必要がある.しかし,この皮膚を穿孔する行為は激しい痛みを伴い,また,これを繰り返すことによって皮膚の硬化を招き,患者の自己血糖値検査への忌避要因となっている.このため低侵襲性の採血針が医療現場で強く望まれている.

 我々はこれまで,蚊の針を模倣した低侵襲性のマイクロニードルを開発してきた.従来研究においては生体適合性かつ生体分解性を有するポリ乳酸を用いて世界最細となる直径 90 µm の中空針の開発に成功している.しかし,この針を用いても蚊の針の穿刺動作を完全に模倣することはできておらず,蚊のように無痛での採血は実現できていない.蚊を観察した際,蚊が採血に用いる上唇という器官は約 40 µm ~ 60 µm と非常に細く,また皮膚内で屈曲するような動作も確認した.そこで我々は,直径150 µm の中空管形状のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のワイヤをフェムト秒レーザーを用いて加工することでマイクロニードルを作製する手法を新たに考案した.作製した中空PET樹脂製マイクロニードルを用いて人工皮膚への穿刺時の抵抗力の測定や,人工皮膚内に血管を模したチューブを有する血管付き人工皮膚への穿刺/採血実験を行った.

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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