2024 年 Annual62 巻 Proc 号 p. 465-467
【緒言】
楽曲を聴くときに我々はメロディを予測しながら聴いており,その予測と実際のメロディ展開の違い(予測誤差)が楽曲による感情生起に関与すると考えられている.本研究では,メロディ中の逸脱音に対する瞳孔拡張反応(PDR),事象関連電位(ERP)の特徴から,皮質下・皮質における予測に関連する逸脱検出のメカニズムを探ることを試みた.
【方法】
18~23歳の健康な大学生17名に,サビを含む12秒程度のメロディを約60曲(内過半数には後半にピッチを高くした逸脱音を含む)聴取してもらい,その間の瞳孔径変動と頭部29箇所の脳波を記録した.1曲の聴取が終わるごとに,メロディに対する親近度(聞き馴染みの程度)と予測性(どの程度予測しながら聴いたか)を5段階評価してもらい,評定値1~2を親近度および予測性低メロディ群,4~5を高メロディ群とした.
【結果】
親近度と予測性の評定値には正の相関があった.PDRは逸脱音提示後0-3 s間に出現したが,その最大値の振幅と潜時は,親近度および予測性の高低のいずれのメロディ群に対しても統計的に有意な差はなかった. ERPは,Czの潜時250-300 msとPzの潜時270-400 msの平均電位が,親近度および予測性高メロディ群で,それぞれ低群と比べ有意に増大していた.
【結論】
皮質下処理に関わる瞳孔変動には,メロディへの親近度・予測性の程度にかかわらず,逸脱反応が出現し,親近度・予測性の違いは皮質応答である脳波に反映されることが確認された.