抄録
近年の計算機の性能向上により,これまで考慮することが難しかった微細な構造や複数の非線形性を考慮した大規模なシミュレーションが可能となってきている.非線形性を有する複数の材料によって構成される実装基板の熱応力シミュレーションにおいては,それぞれの材料の非線形特性を適切にモデル化しないと非線形特性間の相互の影響を考慮できないため,解析結果が大きく変わることが考えられる.本研究では,実装基板のスルーホール部の温度サイクルの熱応力シミュレーションにより,基板母材樹脂の粘弾性特性と,スルーホール部めっき銅薄膜の非弾性特性が相互にどのような影響を及ぼし,温度サイクル条件によって解析結果がどのように変化するかを評価した.その結果,基板母材樹脂のガラス転移温度は温度サイクル高温側保持温度に近いため,温度条件が変わると樹脂の粘弾性挙動が変化し,その影響によりスルーホール部めっき銅薄膜の保持過程における非弾性変形の大きさやサイクル経過に伴う飽和挙動が大きく変化することがわかった.