抄録
本研究は,高齢者,初心者や特定の障害を持つ人々にとって,キーボードやマウスといった従来の情報システムの入力機器よりも遥かに使い易い,タッチモニタ用のソフトウェアキーボードを設計するためのガイドラインの確立を目指すものである.そこで最初に,ユーザ年齢と性別によるタッチモニタ上におけるポインティング動作の動的特性への影響を調べた.主な結果は次の通りである:1.被験者がタッチモニタ上の比較的近距離にある2つの目標の間をポイントする動作を繰り返した時,フィッツの法則(MT=αlog_2D/S+β)はあまり適合せず,むしろ移動時間(MT)は大きさ(S)に対する目標間距離(D)の比率にリニアに増加した(すなわち,MT=αD/S+β).2.係数αは被験者のうちの高齢グループ,中年グループと若年グループでほとんど差が無かった.一方,切片βはこの3つのグループ間で明らかに差が有った.3.係数αは男性よりも女性の方が大きい値となった.さらに,困難指数(D/S)が小さいとき,移動時間(MT)はほぼ同じか女性の方が短かく,一方困難指数が大きくなると男性の方が短くなった.