抄録
本研究は,福祉機器の開発において,身体状況や生活状況に比べ,機器を使用する以前に把握することが難しい心理状況を概念設計の段階で考慮するための開発プロセスの提案を目的とする.これまで,高齢者が車いすなどの移動支援機器の利用を迫られた際に発生する,ジレンマや抵抗感などの存在を明らかにし,その心理状況のモデル化を行ってきた.本報告では,この心理概念モデルを用い,機器開発において事前把握の難しい葛藤や抵抗感などの心理状況を,概念設計の段階で明確にし,機器開発に応用するプロセスを提案する.さらに本プロセスを用いた具体的な事例として,移動支援機器の開発を行うことで,新たなコンセプト立案の実現性と機器開発プロセスの可能性を示す.