抄録
畜舎に襲来する吸血性カ類の種構成とその吸血生態を知る目的で,2002年5月から9月までの期間,北海道幌加内町内の酪農家・肉牛農家の牛舎,厩舎,豚舎にライトトラップを設置し,誘引捕獲調査を行った.また,得られた吸血個体の消化管内血液の由来をELISA法によって検討した.
その結果,牛舎ではキンイロヤブカを優占種とする3属5種109個体,厩舎ではチシマヤブカを優占種とする2属6種148個体,豚舎でもチシマヤブカを優占種とする3属6種29個体,合計3属8種286個体の吸血性カ類が捕獲された.チシマヤブカは6月中旬と下旬にピークを迎える二峰性の消長を示し,ヤマトヤブカとキンイロヤブカは9月下旬にピークを示した.牛舎では62個体の吸血個体が得られたが,32個体は牛から,2個体は鹿から,1個体は牛と鹿の両方から吸血していた.厩舎では17個体の吸血個体が得られ,13個体は馬から,1個体は牛から吸血していた.豚舎では12個体の吸血個体が得られ,そのうちの11個体は豚から,1個体は牛から吸血していた.