抄録
渡り鳥飛来地における疾病媒介蚊の発生状況調査を行った。調査地および調査期間は以下の通りである(青森県十三湖周辺、2007年7月;新潟県佐潟水鳥・湿地センター、2007年5-10月;東京港野鳥公園、2007年4-10月)。調査は主として1kgのドライアイスを誘引源とするトラップを用いて行い、調査地によっては人囮採集も合わせて実施した。十三湖では、6属9種類、337個体、佐潟では6属11種類、2672個体、東京港野鳥公園では4属6種類、2329個体が捕獲された。十三湖ではアカイエカ群が全体の88%を占めた。希少種としてはイナトミシオカ(2雌)とキンイロヌマカ(1雌)が採集され、本州における最北の採集記録と思われる。佐潟、東京港野鳥公園のどちらでもアカイエカ群、コガタアカイエカ、イナトミシオカ、ヒトスジシマカが優先種であった。これら優先種の季節消長には調査地によって違いが見られた。アカイエカ群の場合、佐潟では6-7月に捕獲個体数の急激な増加が見られたが、東京港野鳥公園における発生のピークは8-9月であった。イナトミシオカは、東京港野鳥公園では6月に捕獲数がピークに達した後7-8月に激減し9月以降採集されなかった。これに対して佐潟では、捕獲数は5-8月の期間増加を続け9月にピークを示した。10月の採集でも4個体採集された。コガタアカイエカの発生消長も佐潟の方が1ヶ月ほど遅れていた。調査地間で見られた発生消長の違いは、発生源となっている湿地の規模や水の量的質的な変化、植生の変化などが調査地によって異なるためと思われる。