日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第61回日本衛生動物学会大会
セッションID: A11
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一般講演
鶏舎周辺におけるネズミ類の種構成と行動に関する調査
*橋本 琢磨米田 久美子西口 明子
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抄録
 鳥インフルエンザなどの家畜に甚大な被害を及ぼす伝染病の感染経路として、周辺に生息する野生動物からの伝播が重要な経路である可能性が指摘されている。本調査では鶏舎周辺に生息するネズミ類を対象として、その生息種の特定、および各種の鶏舎内外での活動状況に関する基礎情報を得ることを目的として、捕獲等による調査を実施した。
 調査は2008年8月から12月に、茨城県内の鶏舎にて実施した。鶏舎内および周辺に生息するネズミ類を同定するため、各種のワナ(カゴワナ、シャーマントラップ、粘着式トラップ)を用いた捕獲調査を行った。また、鶏舎内を活動するネズミが鶏舎外に移動する可能性を検証するため、ベイトマーカーとして蛍光顔料を混入させた飼料を鶏舎内で給餌し、その糞および足跡を追跡した。
 調査の結果、30個体のネズミ類が捕獲された。捕獲されたのはアカネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの3種であった。アカネズミは鶏舎外のみで捕獲され、おもに樹林地、畑、草地に生息しており、鶏舎内に侵入する可能性は低いと考えられた。ドブネズミは鶏舎内外ともに捕獲されたが、鶏舎内の捕獲頻度がより高かった。ハツカネズミは鶏舎内外ともに捕獲されたが、鶏舎外の捕獲頻度がより高かった。
 ベイトマーカー調査の結果、確認された着色痕跡は鶏舎内に集中しており、鶏舎外ではごく稀に観察されるのみであった。確認された着色痕跡はすべてドブネズミのものであった。鶏舎内での観察から、ドブネズミは鶏舎の地下に巣穴を設けており、鶏舎内の飼料を中心とした採餌行動をしており、日常の行動圏はほとんど鶏舎内に限定されていると考えられた。
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© 2009 日本衛生動物学会
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