日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第61回日本衛生動物学会大会
セッションID: B25
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一般講演
大分の野外で採集したキアシツメトゲブユ成虫に見いだされた3種オンコセルカ幼虫の分子同定
*福田 昌子大塚 靖高岡 宏行
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抄録

 イノシシ寄生性Onchocerca dewittei japonica(日本の動物寄生性オンコセルカの人体感染例の起因種)の媒介者を検索するために感染実験を行い、本種と新たに見いだしたイノシシ寄生性O. sp.(成虫不明;ここでは便宜上別種とする)のミクロフィラリアが、それぞれブユ6種および3種の体内で第3期幼虫まで生育することをこれまでに明らかにした。また、ミトコンドリアCO1遺伝子解析により、第3期幼虫の形態が類似した両種を区別できることも分った。今回は、ブユが実際に自然界で媒介者になっているかどうかを検討するために、大分県におけるブユ成虫のフィラリア幼虫の自然感染を調査し、フィラリア幼虫の鑑別を試みた。その結果、人吸血性のキアシツメトゲブユSimulium bidentatumからフィラリア第3期幼虫が見いだされ、その形態的特徴(体長,体幅,腸管の長さ)よりタイプAおよびタイプBに分けられた。ミトコンドリア遺伝子の塩基配列の解析では、タイプBがさらにタイプB1とタイプB2に分けられ、タイプAと合わせて合計3つに分けられた。既知および未発表の遺伝子データと比較した結果、タイプB1とタイプB2は上述のO. dewittei japonicaO. sp.にそれぞれ相当した。タイプAは体長が長く従来O. suzukiiまたはLoxodontofilaria capriniと推測されていたが、遺伝子配列の解析では両種とまったく異なる未知のオンコセルカ種であることが示唆された。今回の研究により、人体感染例起因種O. dewittei japonicaの幼虫が、他の類似種とともに野外のキアシツメトゲブユに保有されていることが初めて示された。今後は人吸血性ブユがイノシシからも吸血するかどうかの調査を行う予定である。

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© 2009 日本衛生動物学会
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