日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第61回日本衛生動物学会大会
セッションID: B38
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一般講演
ため池のユスリカ類
*近藤 繁生
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抄録

 わが国に見られる池は、一部の天然池沼を除いてほとんどが農業灌漑用のために築造されたため池であり、瀬戸内を中心に全国におよそ20万箇所点在している。規模は、愛知県の入鹿池や香川県の満濃池のように百ha以上の大きな池から、数百m2の小さな池まで様々である。立地条件も平地に堤で囲ったいわゆる皿池から、山間の谷あいをせき止めて出来た池まで様々である。築造年代も古代から近世までと様々であるが、多くは江戸時代に築造されたといわれている。人工的な池であるため天然湖沼に比べ水深は浅く、最大水深でも2~3mの池が多い。
 ため池のユスリカについては、1975年以来、名古屋市東部の丘陵地帯を中心に50以上の池について調査し、現在までにおよそ80種が記録されたが、それらの種組成は天然湖沼と大きく変わらない。オオユスリカ、アカムシユスリカ、オオミドリユスリカ、ヤマトユスリカ、キザキユスリカなど湖沼の代表種も普通のため池から採集されている。天然湖沼と比べても、立地条件が非常に多様であるため、生息する種も池の環境によって大きく異なることがある。
 市街地に存在するため池では、しばしば特定の種が大発生して、隣接した工場や、民家の苦情の原因となる。また、ジュンサイ池などではユスリカ幼虫による幼葉の食害などの事例も報告され、時に経済的な被害を及ぼすことになる。また、反面第二次生産者としてため池の食物網に重要な役割を有し、池の生態系を支えているほか、池の水質浄化に役立っているものと考えられている。

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© 2009 日本衛生動物学会
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