日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: A10
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第63回日本衛生動物学会大会
琉球列島5島で採集された蚊の吸血源動物の同定とその吸血習性について
*玉城 美加子當間 孝子万年 耕輔比嘉 由紀子宮城 一郎齊藤 育弘
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抄録

琉球列島に生息する蚊の吸血習性を明らかにするために,2005-2010年の6年間,琉球列島の奄美大島,徳之島,伊平屋島,沖縄島,西表島の,森林・住宅地・畜舎等で抱血蚊を採集した。採集は蚊の生息場所や習性によって,4種類の方法(BLBライトトラップ法等)で行った。吸血源動物種の同定は,吸血した蚊の動物血液由来のDNAをPCRによって解析し,NCBIのデーターベースで吸血源動物種を検索した。蚊の吸血源動物には,温血動物の哺乳類と鳥類,冷血動物の爬虫類,両生類および魚類が同定され,吸血した吸血源動物種によって、吸血蚊は大きく3つのグル―プ(温血動物のみ,温血と冷血動物の両者,冷血動物のみを吸血する)に分けることが出来た。それらのグループのうち,今回は後者を除く2つのグループについて報告する。温血動物のみを吸血したグループには,コガタアカイエカCx.tritaeniorhynchus,ウィシニイエカCx.vishnui,シロハシイエカCx.pseudovishnuiが含まれ,哺乳類と鳥類の両者を吸血し,日本脳炎ウィルスの哺乳類と哺乳類間だけでなく,鳥類と哺乳類間の媒介に関係する可能性が考えられた。かつて沖縄本島でマラリアが流行した際に,媒介蚊として考えられているオオハマハマダラカAn.saperoiは高い哺乳類嗜好性を示し,沖縄本島森林内ではイノシシを吸血していた。ネッタイイエカCx.quinquefasciatusは,採集された場所によって吸血源動物の割合が異なり,鶏舎では78%が鳥類,22%が哺乳類を, 住宅地では88%が哺乳類,12%が鳥類あるいは両生類を吸血した。またリバースシマカAe.riversiは,沖縄本島,西表島,徳之島の森林地帯で採集され,哺乳類と爬虫類を吸血し,日和見的な吸血嗜好性を示した。

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© 2011 日本衛生動物学会
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