日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第51回 日本医真菌学会総会
セッションID: SYII-3
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深在性真菌症に挑む -基礎と診療のクロストーク-
内科領域の深在性真菌症
*泉川 公一
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抄録

日進月歩の医療現場において、化学療法や移植技術などの進歩はめざましい。治療効果の向上が目指される一方、宿主が容易に免疫不全に陥り、日和見感染症、特に深在性真菌症などを来しやすい状況にある。内科領域の深在性真菌症の3大原因真菌は、アスペルギルス、カンジダ、クリプトコックスであるが、近年、アスペルギルス感染症の増加は著しい。特に血液悪性腫瘍を基礎疾患にもち、疾患自体あるいは治療に起因する高度な免疫不全が原因で発症する侵襲性肺アスペルギルス症は、きわめて予後不良である。また、肺結核後遺症後の空洞などに、アスペルギルス菌球を形成するアスペルギローマや、空洞周囲に進展する慢性壊死性肺アスペルギルス症なども、診断基準や治療の開始・中止基準などについてのコンセンサスも得られていない。アスペルギルスに抗真菌活性のある抗真菌薬は次々に登場し臨床応用されているものの、いまだ十分な治療成績を上げていない。また、本邦では、HIV/AIDS患者が増加傾向にあるが、HIV/AIDS患者の日和見真菌感染症のうち、クリプトコックス感染症、特に脳髄膜炎は死因の上位を占める重要な感染症である。クリプトコックス感染症は、肺を侵入門戸とし感染が成立するとされているが、脳髄膜炎を発症する機序は不明であり、抗真菌薬以外の補助的な治療も必要であると思われる。カンジダ症においては、近年、アゾール系抗真菌薬に耐性のnon-albicans Candidaが問題とされている。限られた医療資源を用いて、効率的で有効な治療を行う必要があり、耐性を誘導しない治療も念頭に置く必要がある。内科領域の深在性真菌症には、このような様々な問題が存在しているが、抗真菌薬に限界がある以上、感染予防、制御、抗真菌薬以外の補助療法も念頭に置いて立ち向かう必要がある。本シンポジウムでは、これら真菌症の病態と臨床的な問題点を呈示し、臨床現場では何が求められているのか、について紹介したい。

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© 2007 日本医真菌学会
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