背景:呼吸器内科領域では、肺アスペルギローマ、CNPAといった慢性肺アスペルギルス症は度々経験され、治療に難渋することが多い。Voriconazoleで治療した慢性肺アスペルギルス症12例において、その効果と安全性の検討を行った。方法:臨床症状、画像、喀痰培養、β-Dグルカン、ガラクトマンナン抗原、アスペルギルス抗体などの血清学的検査から慢性肺アスペルギルス症と診断した症例に、最低2週間以上Voriconazoleを投与し、その効果と副作用を検討した。また7例は血中濃度を測定し、副作用との関連を検討した。効果判定は、画像改善および症状、排菌、血清診断のいずれかの改善を有効、画像不変および症状、排菌、血清診断のいずれも増悪を不変、画像悪化を悪化とした。結果:有効7例、不変4例、悪化1例であり治療効果は高く、十分な有効性が示された。副作用は9例に出現し、視覚障害の6例は全例投与中に軽快した。しかし肝障害は4例に出現し、うち2例は投与中止とした。その他、皮疹、右心不全、不眠・悪夢、高K血症など副作用は多彩であった。血中濃度は、不眠・悪夢が出現した例で7.09μg/mlと上昇を認めた。考察:Voriconazoleは慢性肺アスペルギルス症の治療に高い有効性を示す一方、副作用の発現率は高く、投与時は副作用の十分な観察が必要である。さらに、長期間安全に使用を継続するために血中濃度測定が有用と思われるが、その関連についてさらなる検討が必要と推測された。