皮膚には白癬菌の侵入に対する感染防御機構が二重三重に存在し、非免疫学的防御機構と免疫学的防御機構があり、後者はさらに自然免疫と獲得免疫に分けられる。獲得免疫としては、遅延型過敏反応が主として関与し、IFN-γ産生能を有する白癬菌特異的Th 1細胞が、皮膚において表皮を場とした白癬菌に対する一種の接触性皮膚炎を引き起こしている。そこではマクロファージが活性化され白癬菌に対する抗菌物質が放出され、また、表皮角化細胞のturn overが亢進し落屑が生じ白癬菌が角層より排除される。また、自然免疫としては、表皮角化細胞が主として関与し、白癬菌刺激により表皮角化細胞のIL-8(好中球に対する走化性活性を有する)産生が増強され、膿疱などの炎症反応を惹起し、さらに、抗白癬菌作用を有するcathelicidin(antimicrobial peptides の一つ)発現が増強され、白癬菌感染に対する防御の最前線として働いている。(なお、Toll-like receptorを介している可能性はあるが、現在のところ表皮角化細胞による白癬菌認識に関わる受容体と誘導されるシグナルについては不明。)このように白癬においても自然免疫と獲得免疫(Th 1免疫反応など)が生じ、生体防御機構として重要な役割を果たしており、また、白癬菌の種類、感染部位により多少の違いはあるものの、白癬菌に対するこれらの生体の免疫反応が白癬の臨床像形成にも関与している。