日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: SY-3-5
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皮膚真菌症の診断と治療のガイドライン:ISHAM2009に向けて
スポロトリコーシス・クロモミコーシス
*楠原 正洋
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抄録

スポロトリコーシスとクロモミコーシスは、いずれも土壌・草木に存在する病原真菌の深部皮膚感染症である。Sporothrix schenckiiを原因菌とするスポロトリコーシスは、健常人にも普通に発症しうる慢性の感染性肉芽腫であり、臨床像や病歴からこれが疑われる場合、診断には生検と真菌培養による菌の同定が必要である。補助的にはスポロトリキン反応も有用であり、培養困難な症例には積極的に行われるべきであるが、疑陽性もあることに留意する必要がある。治療薬として第一にはヨウ化カリウム薬の内服が安価かつ効果的であるが、消化器系の副作用や、施設によっては入手困難なこともあり、次いでイトラコナゾール、塩酸テルビナフィンが選択肢となる。その他、温熱療法など付加的、補助的な療法についても述べる。クロモミコーシスには種々の原因黒色菌が存在し、その病態は宿主側の免疫状態によっても左右される。近年本邦でも黒色真菌による深在性皮膚感染症を、菌の寄生形態によりクロモブラストミコーシスとフェオヒホミコーシスに大別する傾向にあるが、前者をクロモミコーシス(狭義)と称する場合も多く、その呼称には未だ若干の混乱がありガイドラインでの整理が望まれる。診療の際、クロモブラストミコーシスは鱗屑や痂皮から褐色の球形菌要素を、フェオヒホミコーシスは膿汁内の褐色菌糸系菌要素を検出することができれば、その後の生検ならびに真菌培養の要否判定につながる。日々の診療での直接顕微鏡検査が重要であることを強調したい。菌の同定には形態学的手法と分子生物学的手法の両方が望ましいが、施行できる施設は限られるため、全国的な同定ネットワークの構築が期待される。治療では、菌種によっては内臓転移などの重症化に注意し、確実な治療とその後の長期的な観察が重要である。手術療法の適応や抗真菌薬の選択、温熱療法などの組み合わせが必要となる。

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© 2008 日本医真菌学会
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