日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: SY-4-5
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外科・救急領域真菌感染におけるnon-albicansの関与とその治療
non-albicansの治療はキャンディンを選択:Cons
*高倉 俊二
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抄録

non-albicansは単一の性質をもつ菌種ではなく雑多なグループであり、かつて行われていたCandida albicansの簡易同定試験(germ-tubeや厚膜胞子形成)が陰性の株をnon-albicansと総称していた名残りにすぎない。正確に菌種の同定のできる現在、”non-albicans”とまとめることは、いわば”グラム陰性桿菌”とまとめて考えるのと同様の危険性をはらむ。カンジダ属の抗真菌薬感受性が菌種に依存することはよく知られた事実であり、フルコナゾール感受性という点では、感受性菌種であるC. albicans, C. parapsilosis, C. tropicalisと抵抗性菌種であるC. glabrata, C. kruseiに大別される。キャンディン感受性という点ではC. parapsilosis, C. guillermondiiではMICが他菌種に比べて有意に高い。キャンディン感受性のブレイクポイントやMICの高い菌種で治療成功率に差が現れるかは明らかではない。カンジダ症治療薬の比較試験においても全体としては良好な成績が得られてはいるが、複数の報告からはC. parapsilosisにおいて菌陰性化が遅延している。我が国のカンジダ血流感染症ではC. parapsilosisの割合が高いことから、治療成功率の差がわずかでもあれば実数の差は大きくなる可能性がある。さらに、キャンディンの選択において以下の点も注意に値する。
1)カンジダ属の複数菌種においてキャンディン耐性獲得株の報告は徐々に増加しており、いずれも治療中に耐性株が検出されたとされている。
2)キャンディンには点滴薬しかないため、静脈ライン留置期間および入院期間延長に伴う院内感染症のリスクが高まる。
したがって、non-albicansであることのみを根拠にキャンディンを選択すること、あるいは菌種判明後もそのまま継続することのデメリットを認識することは予後改善の最大化に必須であろう。

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