日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: SY-5-3
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深在性真菌症の診断・治療最前線
わが国の深在性真菌症の診断と治療
-最近の動向-(血液内科領域)
*高田 徹
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抄録

昨今、血液内科における侵襲性アスペルギルス症(IA)も治癒例や管理可能な例が増えつつある。ここでは血液内科領域における深在性真菌症の診断・治療の最近の動向について整理したい。
<経験的治療、予防的治療と診断に基づく早期治療>
治療開始基準を抗菌薬不応性発熱に依存する経験的治療には、一定のエビデンスが存在する。しかし、真菌症以外を対象とした無駄な治療例も少なくなく、発熱を伴わない例の見落としにも繋がりうる。予防的治療は、同種造血幹細胞移植や急性白血病の寛解導入などハイリスク例においてエビデンスがあるが、抗アスペルギルス作用のある予防薬の使用については未だ議論がある。最近、最も注目されているのが、CTやガラクトマンナン(GM)抗原など非侵襲的検査診断に基づく早期治療(Pre-emptive therapy)である。昨年、同種造血幹細胞移植例におけるボリコナゾール(VRCZ)とフルコナゾール(FLCZ)の予防効果比較試験が発表された。その結果、CT所見またはGM抗原陽性化を基準にVRCZを投与すれば、FLCZでもVRCZと同等の生存率が得られることが示された。このことは、同種骨髄移植レベルのIAハイリスク例でも、抗アスペルギルス作用を有する予防投薬なしに検査診断に基づく早期治療でIAを管理し得る可能性を示唆している。
<わが国における検査診断に基づく早期治療の導入と課題>
画像検査や抗原検査に基づく早期治療の問題点として1)肺外アスペルギルス症が見逃されうること、2)検査所見が陰性の場合の評価が困難な事、が挙げられる。これらをカバーする方策の一つとしてアスペルギルス菌種や接合菌種の判別が可能な遺伝子検査法の開発・標準化が待たれる。わが国は世界に先駆けてβ-D-glucanに基づく早期治療を導入してきたが、保険診療の制約下でCT, GM抗原などとの組み合わせてどのタイミングと頻度で施行するのが、最も費用対効果の高い方法かも今後検討されるべき課題である。

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© 2008 日本医真菌学会
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