日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: MS-2
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モーニングセミナー2
HIVと真菌感染
*藤井 毅
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抄録

日本国内におけるHIV/AIDSの患者数は年々増加の一途にある。2007年のHIV/AIDS新規発生報告件数は1,500件であり、1985年以降の累積報告件数は14,000件に達する勢いである。強力な抗HIV療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy: HAART)の導入によってHIV感染者に対するAIDS患者の割合は減少傾向にあるものの、日和見疾患を発症してはじめてHIV感染が判明する“いきなりエイズ”も後を絶たない。
真菌感染症は、CD4陽性Tリンパ球(CD4細胞)数が低下したHIV感染者において最も高頻度に発症する重要な日和見感染症である。特に、ニューモシスチス、カンジダ、クリプトコッカスが3大病原真菌であり、2006年までの22年間のエイズ発生動向調査による国内集計では、23のエイズ指標疾患全体(計4,050例)に占める割合は、ニューモシスチス肺炎が47.4%(第1位)、食道・気管気管支・肺のカンジダ症が25.6%(第2位)、肺以外のクリプトコッカス症が2.9%(第8位)であった。アスペルギルス症はエイズ指標疾患には含まれていないが、特にCD4細胞数が極めて低下したHIV感染者における発症の報告も散見されている。日本国内では稀であるが、コクシジオイデス症やヒストプラズマ症などもHIV感染症に関連した重要な真菌感染症である。
本セミナーでは、重篤度の観点から特に重要であると考えられるニューモシスチス肺炎およびクリプトコッカス脳髄膜炎を中心に、自験症例の提示を混えながら臨床像、血液検査所見、画像所見、診断法および治療法などについて概説する。さらに、これらの疾患における炎症細胞やサイトカインの役割など宿主免疫応答を加えた病態生理や、治療上問題となることの多い抗HIV療法に伴う免疫再構築症候群の病態や発症機序についても考察をおこなう予定である。

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© 2008 日本医真菌学会
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