抄録
【目的】細胞膜の構成要素である多価不飽和脂肪酸(PFA)の生成は,複数の脂肪酸不飽和化酵素(FADs)によるが、Saccharomyces cerevisiaeやヒトは最初の二重結合を入れる酵素を保有するのみで、PFA合成のためのFADsを持たない。Candida albicansでは、酵母形から菌糸形への形態変化に伴い、PFAが増加することが知られている。われわれはPFAの合成に関わるC. albicansのCaFAD2およびCaFAD3遺伝子の同定、およびそれぞれの遺伝子の破壊に成功した(Microbiology. 152:1551, 2006)。CaFADsの機能を明確にする目的で、破壊株の表現型と転写レベルでの変化を解析している。
【方法】Real-time PCR法により,菌糸形成に関わるHWP1, ECE1, SAP5, YWP1, RBE1/PRY2, RHD1, GPD1等の遺伝子の発現を解析した。また,獲得免疫機構のないカイコ幼虫の血液内投与による真菌感染モデルにより,病原性を検討した。
【結果および考察】CaFAD2破壊株では、ほとんどの遺伝子で発現が低下していたが、CaFAD3破壊株では有意に上昇していた。両遺伝子の代謝系における機能について考察する。また,カイコによる感染モデルでは,10匹をグループとして有意差があったが,現在LD50を求めている。
【会員外共同研究者:供田 洋,内田龍児(北里大学薬学部),生方公子】