日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: P-031(SI-05)
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分類と同定
コアラ鼻腔スメアから分離した2種の新規担子菌酵母の分類
*佐藤 一朗菅又 美穂槇村 浩一
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抄録

【目的】動物の鼻腔には様々な微生物が常在していることが知られているが、動物種ごとの微生物叢はまだ十分に調べられていない。動物園は生物多様性の保存を目的の1つとした施設であるため、動物園飼育下における各動物に固有の常在菌も同じく保存されている可能性が高い。我々は希少動物として重要なコアラ(健常)の鼻腔から新規担子菌酵母を得たので報告する。【材料および方法】国内動物園で飼育しているコアラの鼻腔スメアを綿棒で掻きとり、純粋分離菌株を得た。26S rDNA D1/D2領域(26S)および ITS1+5.8S rDNA+ITS2領域(ITS)を用いた分子系統分類を行った。そのほかの試験項目はThe Yeasts 4th edに順じた。【結果および考察】CHRMOagar Candidaに特徴的なルビー色を呈する酵母を同じ動物園の3頭から1株ずつ得た。3株の性状は一致し、Sporobolomyces属菌との相同性は26Sが95~99%、ITSが88~92%であり、近縁種と偽菌糸の形成条件が異なった。したがってこれら3株を新種と判断し、Sporobolomyces koalaeと命名した(JCM15063T=CBS10914T=DSMZ19992T, IJSEM in press)。別の動物園から分離したJCM15449株の相同性はBLASTの結果ではTremella moriformisが最も近縁であり96.2、88.7であった。しかしながら、ballistoconidiaを形成する表現形質などからBullera属の新種と判断した。これら2菌種の病原性は不明であるが、宿主が健康であることから非病原性の常在菌であると考えられる。

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© 2008 日本医真菌学会
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