抄録
病原真菌であるCandida albicans (C. albicans) の細胞壁組成は、菌体を取り巻く環境要因に伴い変化することが知られている。細胞壁の組成変化は宿主の自然免疫系の真菌認識に影響を与えるものと思われることから、今回、異なる培養条件でC. albicans菌体を得て、その細胞壁β-グルカンとdectin-1の結合性、細胞刺激性を比較した。C. albicans NBRC1385株とdectin-1の結合性を評価するため、dectin-1可溶性IgGキメラタンパク (sDec1) を作成し、様々な条件で調製した死菌体へのsDec1の結合性を比較した。結果、27℃よりも37℃で培養した菌体への結合性が高く、Potato dextrose培地よりも合成培地 (ショ糖、無機塩、ビオチン) で培養した菌体への結合性が高かった。菌体の加熱処理によってもsDec1の結合性は増大した。次にこれらの菌体によるMφ刺激性を検討した。C57BL/6 (WT) 及びそのdectin-1欠損マウス (KO) のチオグリコレート培地誘導腹腔MφをGM-CSF処理し、死菌体と6 hr培養後、上清中のサイトカイン産生を測定した。その結果、TNF-α産生量は、WTMφではsDec1-Fc結合性の結果を反映していたが、KOMφでは大幅に低下した。以上、培養条件がC. albicans細胞壁β-グルカンとdectin-1の相互作用に変化を与え、dectin-1介在性の免疫応答に影響を及ぼしうることが示された。(会員外共同研究者:東京大学医科学研究所、岩倉 洋一郎、西城 忍)