抄録
尋常性乾癬(Ps)患者の皮膚には、Malassezia globosa(M.g)、M restricta(M.r)が高頻度に常在し、病態との関連が指摘されているが、血清中の特異的抗体の報告は少ない。この度は、Ps患者におけるM.gとM.rの関与について特異的IgG抗体およびIgA抗体を測定し検討した。「方法」YOSHIDAらの方法に準じて、菌体破砕抗原を固相化したELISAを作製した。Ps患者(25例、年齢56.4±15.3、男性:22、女性:3)で血清中のM.gとM.r特異的IgG抗体価(mg/L)およびIgA抗体価(μg/mL)を測定した。年齢21~40才(A群:5例)、41~60才(B群:9例)、61~80才(C群:11例)の3群で比較し、健常者(H群:27例、年齢47.5±14.0、男性:15、女性:12)とも比較した。「結果」Ps患者のM.g特異的IgG抗体価はA群:3.04±3.07、B群:1.93±1.72、C群:3.14±4.28、H群:4.51±4.68、M.r特異的IgG抗体価はA群:2.28±2.21、B群:1.18±1.48、C群:1.49±0.77、H群:2.86±3.24であり、M.g特異的IgA抗体価はA群:0.087±0.036、B群:0.14±0.11、C群:0.49±0.47、H群:0.45±0.79、M.r特異的IgA抗体価はA群:0.18±0.18、B群:0.25±0.33、C群:0.71±0.96、H群:0.79±1.31であった。「まとめ」Ps患者の特異的IgA抗体価は、A,B群で健常者群に比較して低値傾向であった。Malassezia対する粘膜免疫機能の低下が示唆された。さらに病態と関連した検討が望まれる。