日本平滑筋学会雑誌
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消化管運動研究の最近の動向
福原 武
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1968 年 4 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

正常の消化管運動の型式やその経過を研究するには, 腹窓法やX線照射法を用い, 映画撮影法を併用する. しかし, 正常運動からさらにすすんで運動の機序をくわしく研究しようとすると, このような方法だけでは足りず, 多少の興奮性低下を犠牲にしても, 開腹した状態で, あるいは剔出腸管について研究をすすめなければならない.
生体内腸管あるは剔出腸管のいずれにおいても, その収縮にともなってひき起される縦あるいは横径, 容積および内圧の変化が腸運動の示標とされ, それぞれについて描記法が工夫されてきた.この総説では, それぞれの方法の得失について論及し, いまのところ, 生体内腸運動の描記法としては, ゴム球法にまさるものがないこと, また内圧を一定にした状態, すなわち等張力性状態で収縮による容積運動を描記しながら, いろいろな刺激や薬物による影響を検討するのが最良のやり方であるとみなされることを述べた.
正常消化管の運動型についての諸家の見解は古くから今日にいたるまで不一致のまま推移しているが, 近年, 北アメリカの諸学者はゴム球法によって描記された収縮曲線を振幅と緊張の状態によってType IからIVにいたる波型に分類し, それぞれが本質的に異なるものであると考え, 機能的にも別個のものとしてし理解しようとしている.
著者は上述の理論の不当である理由を述べ, 自己の理論の正当なることを強調する.すなわち著者によれば, 消化管の正常運動は一見多種多様, 複雑な外観を呈するけれども, 本質的にはただ一種の律動収縮波とみなすことができる.この見地にたてば, ゴム球法では, この収縮波が伝播の途次ある一局所においてひき起す容積あるいは内圧変動をとらえていると考えられる.そして収縮波であるから当然のことではあるが, 波の強弱によって差異はあるけれども, 常に内容推進の力をもっている.
上に述べた見地に立てば, 消化管は, 収縮波によってその内容が推進される一種の管系であり, その内容推進にはPoiseuilleの法則V=πr4p/8ηlEがあてはまると考えることができる.この式でVは腸管の容積移動(ml/sec)を示し, pは腸管の収縮波の振幅で, これで推進力が表示されており, rは腸管の半径で, 緊張の度合を示しておる.実験例をあげ, pおよびrの変化の内容輸送に及ぼす影響を論じた.

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