抄録
通信用継電器の接点ばね材料として, ステンレス鋼を取り上げ, まず, ばねの製造加工法ならびに機械的性質とその相関関係について考察し, それらの結果をもとに熱処理による直線ステンレスばねを見いだしたものである.
(1) 直線ステンレスばねの製造は, 減面率60%以上に冷間線引加工したステンレス鋼線に, その降伏点以下の引張力を与えながら, 500~800℃の無酸化ふん囲気中の温度で短時間処理を施せばよい.
(2) 熱処理きょう正によって得たステンレスばねの機械的性質は, 従来の銅合金ばねに比べ疲労強度は2~3倍, しかも均一で, ねじり曲げ加工性がきわめてよいので継電器の接点ばねをはじめかなり複雑な形状のばねにも応用できる.
(3) ステンレス鋼線のビッカースかたさと引張強度, 耐力相互間には加工条件には無関係に1対1の対応関係がある. また, ばね限界値は加工処理別に直線関係が成立する.