抄録
各種熱可塑性樹脂の射出成形物の機械的性質 (引張り, 衝撃) に対する成形条件, 測定位置, 測定方向の影響を, 金型キャビティ内の流動性の評価の過程で得られた細長い成形物を利用して実験的に検討した. 結果の概要は, (1) 一般に流動方向の機械的強度はゲートに近いほど, 融液温度が低いほど, 射出圧力が高いほど大きくなり, 直角方向の強度は逆の傾向となる. 特にゲート付近の流れに直角方向の値Q0, ⊥は最も小さくなる. (2) 流動方向のゲートおよび先端付近の値Q0,||とQ1,||とからその比Q0,||/Q1,||(=α) が機械的性質の不均一性の尺度として求められ, (3) ゲート付近の流動方向およびこれと直角方向の値Q0,||とQ0,⊥とからその比Q0,||/Q0,⊥(=β) が機械的性質の異方性の尺度として求められ, 各種材料について比較された. (4) 工業用プラスチックと称せられる材料は機械的強度に対する成形条件の影響が小さく, α, β値は1に近く, Q0,⊥値の低下はほとんどない. (5) 細長い射出成形物では機械的性質の不均一性や異方性は拡大されて現われるので, これらの値は材料評価や最適成形条件選定のためのよいめやすとなる.