抄録
2025年に日本政府が策定した「人工知能基本計画」が示すように,AI技術は世界の持続可能な発展に必要不可欠なテクノロジーとなっている.AI技術の海洋分野における今後の利用について検討するため,海洋分野の様々なカテゴリを網羅する形での文献調査や,AI技術のデータサイクルを踏まえた整理を行った結果,従来は画像認識や異常検知など特定の単一タスクを対象とした事例が中心であったのに対して,近年では複数のプロセスを横断したAI技術の研究事例が多く見られた.そして,それら事例を踏まえて,今後の海洋分野において鍵となる要素技術として「汎用的な基盤モデル」「サロゲートモデル」「フィジカルAI」の3点に着目し,研究事例に基づいた整理を行い,信頼性の高い海洋データの取得が,これら要素技術に共通して重要になることを示した.AI時代において,これまで日本が蓄積してきた海洋分野の研究基盤やモニタリングの役割は引き続き大きく,継続的に発展させていくことが望まれる.また,これら信頼できる研究基盤や,多様性に富む日本周辺海域の特性を活かしたモニタリングを踏まえて,日本が海洋データ基盤の構築を打ち出して,海洋分野での国際的なAI技術の進展に貢献できれば意義深い.