NEUROSURGICAL EMERGENCY
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Print ISSN : 1342-6214
脊髄症状にて発症したダンベル型脊髄硬膜外悪性リンパ腫の1例
庄瀬 裕康相原 英夫山下 俊輔森下 暁二向原 伸太郎高山 博行
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2020 年 25 巻 1 号 p. 111-118

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抄録

 脊髄症状にて発症した脳病変を伴うダンベル型脊髄硬膜外悪性リンパ腫の1例を報告する.症例は66歳男性で,約2週間前からの背部痛と両下肢から体幹にかけてのしびれで発症し,脊椎MRI(Magnetic Resonance imaging)でT(Throracic)3‒5レベルの脊柱管内から脊柱管外に進展する腫瘍性病変を認めた.硬膜外神経鞘腫の診断で手術を予定していたが,その3日前に見当識障害,失語,軽度右上肢の麻痺が出現.頭部MRIで左頭頂側頭葉に出血性梗塞を疑う所見を認め,その後全身痙攣もきたしたため,手術を一旦延期して脳梗塞およびてんかんの治療を行った.その後対麻痺の進行と膀胱直腸障害の出現も認め,最終的に脳病変出現の10日後に脊髄腫瘍の摘出手術を行った.腫瘍は硬膜外に限局しており肉眼的に全摘出を行い,病理学的診断はびまん性大細胞B細胞リンパ腫であった.出血性梗塞と思われた脳病変は,後日の生検で同様の病理所見を確認.PET‒CT(Positron Emission Tomography‒computed tomography)では上肢や脊椎などの多臓器の病変を認めた.まずMTX(Mrthotrexace)による化学治療を行い脳病変は消失を認めたが,脊髄硬膜外病変は術後から脊髄圧迫の解除は継続も重度の対麻痺は残存していた.その後リツキシマブ,シクロホスファミド,ドキソルビシン塩酸塩,ビンクリスチン,プレドニゾロンを併用するR‒CHOP療法による全身化学治療目的で転院となった.ダンベル型を呈する脊髄腫瘍は神経鞘腫を疑う事が多いが,本例のような急速に悪化するリンパ腫など悪性疾患を念頭において,早期の手術および他部位病変の検索を考慮すべき例も存在する.

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© 2020 日本脳神経外科救急学会
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