NEUROSURGICAL EMERGENCY
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軽微な外傷で生じたMLF症候群の一例
米澤 あづさ柿沼 千夏吉澤 将士渡辺 仁吉田 貴明
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2021 年 26 巻 1 号 p. 111-117

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抄録

 頭部外傷によってMLF (Medial Longitudinal Fasciculus) 症候群を生じた症例報告は比較的少ない.また,軽傷に分類されている例でも転落や交通外傷によるものであり,一過性でも意識障害を伴っていることが多い.今回,非常に軽微な外傷でMLF症候群を呈した症例を経験したので報告する.症例は61歳男性で,柱に前額部を打撲した直後から嘔気,ふらつき,複視が出現した.鏡を見て左眼球の異常に気づき,当院外来を受診した.頭部CT (Computed Tomography) およびMRI (Magnetic Resonance Imaging) 所見より,橋左側の急性期梗塞および脚間槽の外傷性くも膜下出血と診断し,保存的治療を行った.出血の拡大はなく,症状は軽快し,最終的にはごく僅かな左眼内転障害のみとなり,受傷後15日で自宅退院となった.本症例は頭部打撲の衝撃で穿通枝が引き抜かれた結果,脚間槽にくも膜下出血を生じ,MLFが虚血に陥ったと考えた.

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© 2021 日本脳神経外科救急学会

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