NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群により切迫脳ヘルニアをきたした1例
松崎 遼根本 匡章桝田 博之三海 正隆中田 知恵渕之上 裕内野 圭寺園 明原田 雅史近藤 康介原田 直幸周郷 延雄
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2021 年 26 巻 2 号 p. 197-203

詳細
抄録

 慢性硬膜下血腫(CSDH)を合併した特発性低髄液圧症候群(SIH)において治療に難渋し,切迫脳ヘルニアに陥った一例を経験したので報告する.症例は45歳男性,起立時の頭痛を主訴にSIHを疑って入院となった.CT上,両側CSDHを認め,ガドリニウム造影MRIで硬膜は均一に増強された.脳槽シンチグラフィーでは上位胸椎レベルでの髄液の漏出が疑われた.安静と点滴による保存的加療を行ったが意識障害をきたし,硬膜外カテーテルからの生理食塩水注入と自家血注入を行い意識清明となった.しかしその後に再び意識障害が出現したため硬膜外自家血注入療法を行うも意識は改善せず,切迫脳ヘルニアに陥った.CSDHによる頭蓋内圧亢進が原因と考え,穿頭洗浄術を施行したところ意識清明となり独歩退院した.本例の病態として,初期にはSIHによる頭蓋内圧の低下が主であり,CSDHの圧により頭蓋内圧の均衡が保たれていたが,CSDHの増大に伴って頭蓋内圧亢進に転じたものと推測される.そのため硬膜外自家血注入療法によって漏出部位を閉鎖させたことが急速な頭蓋内圧亢進をもたらし,切迫脳ヘルニアを誘発したと推測される.本例のごとくCSDHとSIHの合併例では両者を同時に治療することを考慮すべきであろう.

著者関連情報
© 2021 日本脳神経外科救急学会
前の記事 次の記事
feedback
Top