NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
クモ膜下出血周術期に食道静脈瘤破裂を繰り返した1例
田中 達也桃崎 宣明本田 英一郎河島 雅到
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 27 巻 1 号 p. 34-40

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抄録

 症例はC型肝炎の既往がある73歳女性.突然,強い後頭部痛が出現し,当院へ救急搬送された.クモ膜下出血と左内頚動脈‒後交通動脈分岐部動脈瘤を認めた.脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血と診断し,開頭脳動脈瘤クリッピング術を施行した.第2病日より脳血管攣縮に対して抗血栓療法を開始した.第8病日に吐血し,精査にて肝硬変による食道静脈瘤破裂と診断し,内視鏡的食道静脈瘤結紮術を行った.抗血栓療法を中止したが,吐血を繰り返し,内視鏡的に止血を繰り返し行った.第10病日に意識障害,左上下肢麻痺が出現し,症状は動揺した.右内頚動脈狭窄による虚血性脳卒中と診断した.第11病日に頚動脈内膜剝離術を施行した.第32病日に内視鏡的食道静脈瘤硬化療法を行い,その後,吐血は認めなかった.6か月後mRS 2にて自宅退院し,4年経過し,食道静脈瘤の再発は認めない.

 C型肝炎などの肝硬変を来す基礎疾患を持った患者は出血性脳卒中を起こす可能性が高く,抗血栓療法下で食道胃静脈瘤破裂を含む消化管出血を起こしうる.肝臓病医と緊密に連携し,栄養管理等も含め肝硬変の合併症の精査・加療を行うことが重要と考える.

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© 2022 日本脳神経外科救急学会
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