NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
血栓回収療法におけるドクターカーの活用と課題
~地方都市圏での検討~
柳川 太郎佐藤 政哉木村 辰規池田 峻介吉川 信一朗植杉 剛池田 俊貴
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 28 巻 2 号 p. 111-116

詳細
抄録

 急性期血栓回収療法において,発症から再開通までの時間短縮は最重要課題と考えられる.2021年1月に開設した当院脳卒中センターでの血栓回収療法において,院内環境整備を行い,当院到着から再開通までの時間短縮には一定の成果を上げることが出来た.一方,転院搬送症例において,前医受診から当院到着までの遅れが目立ち,当院到着時には脳梗塞が完成してしまった症例や,迅速な再開通を行ったが広範囲脳梗塞に陥った症例が散見された.そこで本研究は,転院搬送におけるドクターカーの活用方法と今後の課題を調査することを目的とした.2021年1月から2022年12月までの2年間で,脳卒中疾患の急性期治療目的での転院搬送にドクターカーを利用した症例を対象とした.また同時期に救急車で転院搬送となった血栓回収症例に関しても,ドクターカーと同様にデータを取得した.ドクターカーと救急車での移動能力に有意な差は認めなかった.紹介先病院での患者搬入に要する時間も有意な差は無かったが,ドクターカーでは工夫次第で短縮出来ることが示された.ドクターカーでは搬送中にrt‒PAなどの積極的な治療や家族への説明・同意書取得などを行うことで,到着後のステップを省けるメリットがあった.一方,遠方の病院へのドクターカーの出動は時間短縮には繫がりにくいことも分かった.血栓回収症例の転院搬送にドクターカーを利用する際は,それぞれの医療圏に合わせて条件を設定することで,時間短縮に重要な役割を果たしうる.

著者関連情報
© 2023 日本脳神経外科救急学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top